続・真夜中の相談屋さん 〜都内在住・自営業「へたれ探偵」編〜


 ピルルルルルル ピルルルルルル

「…………もしもし?」
『もしもし? 相談屋さんですか?』
「ええまぁ、不本意ながら、そういうことになってるみたいです」
『じつは職場でちょっと……いや、だいぶ苦労していて』
「職場? 人間関係のトラブルですか?」
『バイトで来てくれている子が、ちょっと変わった子で。よくいえば行動力があるんだけど、悪くいえば……周りのことなんて気にせず、どんどん突き進んでいくというか。僕もそれに振りまわされがちで』
「なるほど。つまり、その子が自己中な他人巻きこみ型で、だいぶ迷惑していると」
『あ、いや、そこまでは……。でも彼女、後輩がいるんだけど、その子もまたかなり個性的な子で。仕事場にもよく顔を出すんだけど……』
「二人がタッグを組んだせいで、その暴走にも拍車がかかって困っていますよ、と」
『え? いや、うん、そう……だね』
「じゃあいっそのこと、解雇しちゃえばいいじゃないですか。そうすれば万事解決。めでたしめでたし」
『さすがにそれは……。それに、クビにしたらあとが怖いのは僕のほうだよ』
「でもその子のおかげで迷惑してるんでしょう? 仕事にも支障をきたして」
『いや、別に迷惑ってほどでは……。それに、仕事に関しては、むしろ助かってるくらいだよ』
「は? なんですか? その子がいるせいで苦労してるんじゃないんですか?」
『まあ確かに苦労はしてるけど、最近はそれにも慣れてきたかな。この状況を楽しんでる自分もいるし』
「はい? じゃあ何を悩んでいるんです? なにか相談事があったから、わざわざ私のところに電話してきたんでしょう? こんな夜遅く、こっちの事情も考えず」
『悩んでること……。できれば、ことあるごとにボーナスを要求するのは控えてほしいかな』
「なんですかそれ。それは悩みじゃなくて、要望っていうんですよ。そんなの本人に頼んでくださいよ」
『そうだね、そうするよ。夜分遅くに失礼しました』
 プッ ツーツーツー
「はあ? なんなの、今の人……」
 次の日窓辺にあったのは、怪しげなお札が一枚。何に効果があるというのだろう……。
 その日の夜、今度はやたら偉そうな教師から電話がかかってきたのだが、それはまた別のお話。

※『冥探偵日誌』より先生。案外悩みはない。

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