新・真夜中の相談屋さん 〜K県在住・公務員「傲慢世界史教師」編〜

 ピルルルルルル ピルルルルルル

「…………もしもし?」
『もしもし? 相談屋か?』
「認めたくないですけど、そうみたいです」
『なんだそれ。はっきりしろ』
「はいはい、私が相談屋ですよ」
『ならはじめからそう言え』
「すみませんねぇ……。それで? 相談事はなんでしょう」
『元教え子に狙われてるんだ』
「狙われてる? 何をですか? 命ですか?」
『馬鹿かお前は。どこの世界に教え子に殺し屋を持つ教師がいるんだ』
「馬鹿とはなんですか。いるかもしれないじゃないですか、もしかしたら」
『憶測でものを言うな。そういうやつが一番気に食わない』
「すみませんねぇ……。ちょっとしたジョークのつもりだったんですが」
『ならお前、才能ないな。まったく笑えなかったぞ』
「そのようで。どうやらあなたとは、笑いのセンスが違うようです」
『そうだな。お前のほうが三ランクくらい下だろう。いや、四ランクか?』
「……ねぇ、あなた。よく失礼なやつだって言われません?」
『まったくもって言われない。俺は常に場をわきまえた話し方をしている』
「それじゃあどうして今は、こーんなにも傍若無人なんでしょうねぇ」
『お前、傍若無人の意味、わかってるのか? 俺が世界史教師だと思って舐めるなよ』
「舐めてませんよ。というか、世界史教師だってこと、今知りました。ちなみに傍若無人は意味をわかって使っているつもりですが、なにか問題でも?」
『俺は常に場をわきまえていると言っただろう。お前に対する俺の態度には、いたってなんの問題も間違いもない』
「それはつまり、私に対しては、こう接するのが正しいと」
『わかってるじゃないか』
「……ねぇ、あなた。そんなんじゃ恋人できませんよ」
『あいにく、俺はそっち方面で苦労したことはないんでな。……いや、一人例外がいるか』
「はい? すみません。最後のほう、よく聞こえなかったんですけど」
『いや、なんでもない。――ん? 悪い、キャッチが入った。それじゃあな』
「え? ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
『お前はもう少し日本語の勉強をしたほうがいいな』
 プッ ツーツーツー
「……元教え子に狙われてる件はどうなったんだ?」
 次の日窓辺にあったのは、四字熟語辞典だった。とことん腹立たしいやつめ。
 その日の夜、今度はやたら苦労性のお兄さんから電話が掛かったきたのだが、それはまた別のお話。

※『彼と彼女の×××』よりコースケさん。ここまで偉そうな人だったっけ?

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