真夜中の相談屋さんサードシーズン 〜都内在住・公務員「雷使いの苦労人」編〜

 ピルルルルルル ピルルルルルル

「…………もしもし?」
『もしもし? 相談屋さんか?』
「一応そういう設定らしいです」
『設定? ……まいいや。それより聞いてくれよ。オレすっげー苦労してんだよ』
「ええ。声からもなんとなく、その苦労っぷりが伝わってきます」
『だろ? ここ最近は特にひでぇんだよ。仕事上でパートナーを組んでるヤツがいるんだけどさ、そいつがまた曲者で』
「といいますと?」
『外面はいいくせに、身内に対しては厳しいのなんのって。特にオレに対してはな。もうパシリのごとく扱われてんだよ』
「大変みたいですねぇ」
『そうだよ! 大変なんだよ! ちょっとでも逆らおうもんなら、アイツ、一生チクチク嫌味なこと言って攻撃してくるんだぜ。そんで最終的には笑顔で呪い殺すんだよ、オレのこと』
「お、恐ろしいですね……」
『ホントマジ勘弁だぜ。アイツのパートナーなんて、命がいくつあっても足りないっつーの』
「お互い苦労してますねぇ……」
『ん? なんだよ、あんたも苦労してんのか?』
「してますよ! 頼んでもいないのに勝手に相談屋なんてものに仕立て上げられて、毎晩のように電話がかかってくるんですよ? それがあなたみたいにまともに話せる人ならまだいいですけど、ほとんどが一方的に愚痴を言い散らかしていくだけ。それでお礼だかなんだか知りませんけど、わけのわからないものをひとんち窓辺に置いてって……。いい加減にしてほしいですよ、まったく!」
『そうか……。なんかわかるぜ、その気持ち。そんで相談したくてもできないんだよな』
「そうそう! ひとに話したって、頭のおかしいやつだと思われるのがオチです。私なんてひとの相談を聞くだけで、自分は誰にも話すことができないんですから」
『大変だよなぁ……』
「大変ですねぇ……」
『なんか悪いな、愚痴ばっか言っちまって。でもスッキリしたぜ』
「いえいえ。こちらこそ、話を聞いてもらって少し気が晴れました」
『それじゃあな』
「はい」
 プッ ツーツーツー
「なんかいい人だったなぁ……」
 次の日窓辺にあったのは、『悪い。今金欠だから、何もお礼できねぇわ』と書かれた紙が一枚。今回だけは特別によしとしよう。
 その日の夜、今度は初めてクレーム電話がかかったきたのだが、それはまた別のお話。

※『Mad Gloria』より出流。なぜか意気投合。

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