真夜中の相談屋さん・第四章 〜?在住・自営業「怪しげな店主」編〜

 ピルルルルルル ピルルルルルル

「…………もしもし?」
『もしもし? 相談屋さん?』
「そうといえばそうだし、違うといえば違います」
『困るなぁ。そこんとこはっきりしてくれないと』
「じゃあ違います」
『またまた。君、噂の相談屋さんでしょ?』
「噂? 噂にはなっていないと思うので、やっぱり違います」
『もー。君が知らないだけで、じゅうぶん噂になってるんだよ』
「はあ……それじゃあそうなんでしょう」
『困るんだよねぇ、商売の邪魔されちゃ』
「はい? 商売の邪魔、ですか?」
『そう。率直にいうところの営業妨害』
「なんの商売をなさっているのか知りませんが、私はそんな覚えありませんけど」
『君にその自覚がなくても、こっちはじゅうぶん迷惑してるんだよ』
「……具体的におっしゃっていただけますか?」
『それがね、君が相談屋なんて開業してくれちゃったおかげで、うちの店の客足が減っちゃってさぁ』
「つまりは同業者なんですか?」
『うーん、ちょっと違うかな。君は相手の話を聞いてあげるだけだけど、うちは願いを叶えてあげるてるから。でもうちはあくまで商品を売っている店だから、どうしてもお金がかかるんだよね。その点、君んとこはタダでしょ? だったらタダのほうを選ぶ人も多いからねぇ』
「……それで私に相談屋をやめろと」
『まぁ、そうしてくれるのが一番ありがたいことではある。でも……』
「やりたくてやってるんじゃありません。だから、やめたくてもやめれないんです。向こうから勝手に電話がかかってくるんですから」
『だよね。そこでだ』
「はい?」
『これさえあれば、妙な電話はかかってこない! 不思議な不思議な非通知設定・受信拒否のお守り〜♪ 今なら三万円ポッキリ! 月々千円からの分割払いもご利用できますが?』
「………………」
 プッ ツーツーツー
「とうとう勧誘電話までかかってくるようになったか……」
 次の日窓辺にあったのは、お店のチラシらしきもの。『きっとお望みの品物が見つかるはずです』が店の謳い文句らしい。丸めて捨てた。
 その日の夜、今度は一日に何人もの人から電話がかかったきたのだが、それはまた別のお話。

※『雅藍堂』よりトキ。押し売り上等。

≪前の日小説TOP次の日≫

HOME